ロックダウンが続き失業率も40%を超えているといわれ、国内経済が厳しい状況にあるフィリピン。普通ならフィリピンペソも安くなってもおかしくないと思うのだが、実際には対ドル、対円でも年初からほとんど変わっていない。
外国為替の決定要因はいろいろあるので簡単には説明できない。例えば一般的に実質金利が高い国と低い国を比べると、低い国の通貨を売って高い国の通貨を買って運用すれば金利の差が利益になる。一時期先進国の中で最も金利が安かった日本円を調達し、アメリカドルを買って運用する動きがあり、その結果円高ドル安に振れたことがあった。
最近は主要通貨(アメリカドル、ユーロ、ポンド、円)の政策金利はほぼ0%。名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利はアメリカが-1.0%、日本が-0.1%程度。金利差だけを考えるとドル円相場はもう少し円高になってもおかしくない。
フィリピンの名目金利は2.75%、インフレ率が2.5%なので実質金利は0.25%になる。したがってフィリピンペソの価値が下がらないのはある程度説明がつくが、私はもっと別な要因があると思っている。
それは海外で働くフィリピン人からの送金だ。昨年の送金額は214億4千万ドル(2兆2297億6千万円)にのぼっている。ざっくりとフィリピンの人口を1億1千万人とすると、一人当たり年間2万円の仕送りを受け取っている計算になる。
フィリピン人の海外からの送金で最もボリュームが大きいのがアメリカからのものだ。つまりアメリカドルを売ってフィリピンペソに換えることになるので、対ドルについてフィリピンペソが安定しているというわけだ。
こうした在外フィリピン人の送金に助けられて、今年度のフィリピンの国際収支は81億ドルの黒字になるとフィリピン中央銀行は発表している。国際収支が黒字となるとフィリピンペソが売り込まれる要素がないので、当分フィリピンペソは安定していくことになりそうだ。
今回為替相場のことを書いたのは、私が将来フィリピンで暮らす際にもっとも大きい収入が年金になるためだ。日本年金機構が在外の年金受給者に送金する場合、ドルでフィリピンの銀行口座に振り込むことになっている。フィリピンではさらにそのドルをフィリピンペソに換えて受け取ることになる。
円の価値が高ければドルの受取額が多くなり、ドルとフィリピンペソの交換比率によって受取額が変わってくる。したがって為替相場にも敏感にならざるを得ないというわけだ。