第一生命が気になるアンケート結果を発表した。
それは全国の小学生、中学生、高校生3,000人に大人になったらなりたい職業は何かという調査だ。
なんと1位が会社員(女子小学生の1位はパティシエで会社員は4位)のなのだそうだ。
会社員になりたいという割合は小学生では8%くらいだが、高校生になると男女とも20%を超える。
高校生ともなると具体的に将来のことを考えてくるので、会社員という選択をする生徒が多くなるのだろう。公務員と回答した割合も10%となっている。
公務員はともかく昔と違って会社員という職業が将来的に安定した収入と生活を保障するものではないが、イメージとしてはまだ安定した職業と子供たちには映っているのだろう。
ところで会社員を職業と呼んでいいのだろうか?
今回のアンケートの回答の選択肢欄におそらく「会社員」という項目があるので、それにチャックした子供が多いのではないかと思う。
日本では職業の欄に会社員と書くのはごく普通だが、考えてみると会社員というのは会社に雇われている人のことで、会社員を職業といってしまうのは変な気がする。
海外に行くときに記入する入国カードには職業欄があるが、会社員と書くことができないのでガイドブックなどでは事務員やオフィスワーカーと例示されている。
しかし日本の会社員が事務職というわけではなく、技術系の会社以外は営業部門で働いているが圧倒的に多いはずだ。
海外で「どのような仕事をしていますか?」と訊かれて「会社員」とか「○○会社で働いています」と応えたら相手はまごつくだろう。
「車のセールスをしています」とか「経理の仕事をしています」なら理解してもらえるはずだ。
こうしたことが起こるのは雇用慣行の違いが原因だと思う。
日本は新卒採用で会社に入る人が多いが、専門職を除くとほとんどが一般職として採用される。会社のどの部門で働くかは入社後に決まる。その後もいくつかの部門を経験させることで適性を見極めて人事部が配属を決めていくことが多い。入社時に経理や企画の仕事を希望しても配属先が営業ということも普通にある。
つまり会社の都合によって仕事内容が変わるのが日本の会社員の働き方だ。
一方職務別の採用が一般的な国では、募集の際にどんな仕事をするのか明示しているので入社後に募集内容と違う部門に配属されることはないようだ。
したがって日本人が「職業は?」と訊かれて「会社員」と応えるのも致し方ないのだろう。
ところで私が大人になったらなりたかった職業は、小学生のころ「憶えていない」。中学生のころ「映画監督」。高校生のころ「歴史学者かアナウンサー」。大学生のころ「アナウンサーか会社員」だった。
会社員として40年以上働いてきて、もうすぐ「会社員」を引退する予定。
その後の職業は今のところ未定だが、昔やりたかった仕事にチャレンジするのもいいかもしれない。