はやく帰っておいで

中国共産党大会が閉幕し、習近平が3期目の国家主席についた。本来なら2期10年で引退しなければならないのだが、2018年に規約を改正して続投できるようにしていた。

国家主席の任期に制限を設け、チャイナ・セブンとよばれる集団指導体制を中国共産党がつくったのは、かつて毛沢東が専横的な国家運営を行ったことで、文化革命では数十万人の死者を出し、多くの人々を不幸にした歴史があったからだ。つまり独裁体制は中国を不幸にするので、それを阻止するのが国家主席の任期10年と国家主席を含む7人の党政治局常務委員による集団指導体制だった。

これを破ったのが習近平だ。しかも今回政治局常務委員に習近平の側近を就かせており、完全に習近平の一存で中国を動かすことができるようになった。

2013年にオバマ大統領と初めて首脳会談を行った習近平は、「これから世界の二大国となるアメリカと中国で太平洋を二つにわけて支配しよう」と持ち掛けたといわれている。
この時から習近平は覇権主義国家としての中国となることを自らを定義していたのだ。

その後、中国は着々と国力をつけ近隣諸国に圧力を加えるだけでなく、実際に南沙諸島で人工島をつくり、南シナ海は中国の海だと主張。これに意を唱えたフィリピンが国際組織である仲裁裁判所に訴え、判決でフィリピンが勝訴している。ところが中国は「そんなものは単なる紙切れに過ぎない」と無視し続けている。
イギリスから返還された香港についても、50年間は一国二制度で運営すると約束していたにもかかわらずこれを反故にし、香港の民主主義は死んだ。

さらに習近平の中国は台湾の武力統一、日本の尖閣諸島を自国の領土にしようとしている。

日中国交樹立からこの50年間、日本は中国の近代化を援助し続けてきたがこれが裏目に出てきている。
日本企業の駐在員を含め12万4千人が中国で暮らしているが、中には突然警察にスパイ容疑で連行され獄中生活を余儀なくされている人もいる。彼らの容疑について中国政府は内容を明らかにしていない。つまり容疑となる事実がないと考えるのが相当だ。

問題なのは、こうした中国に今でも進出しようと考えている日本の経済人がいるということだ。
コロナ禍で減ったとはいえ12700社もの企業が中国に進出していて、チャイナリスクを考慮して撤退する企業があるなかで、新たに1325社が進出している(帝国データバンク)。

今回の共産党大会では、国家主席だった胡錦涛氏が衆目の前で強制定期に退場させられ様子が全世界に発信された。この映像はまさに習近平が独裁者としての権力を握ったという事実を見せつけた。

今や中国は、台湾や日本、フィリピン、アジアの脅威にとどまらず、世界の脅威になった。その脅威はロシアなど足元にも及ばないほど大きい。

この中国にどのように対峙するかがいま問われている。

手始めに、中国に進出している日本企業と日本人を一日でも早く日本に呼び戻すことが求められている。

みなさん。はやく帰っておいで!

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