先週ブルームバーグのサイトに「引退までの道、長くなるばかり-働く人の怒りが世界に渦巻く」という記事が載った。
程度の差はあれ先進国はどこも高齢化が進んでいる。そのため公的年金がGDPに占める割合が増えてきており、2040年には10%を超える見通しだという。
日本は高齢化では先進国なので、厚生労働省のホームページではすでに10.4%と発表している。
こうした状況を踏まえ、各国とも年金支給開始年齢を段階的に引き上げる方針だがなかなか改革が進んでいない。年金は高齢者の生活を支える大切な収入なので、支給開始年齢が遅くなるとそれまで仕事をしなくてはならなくなる。
英国では支給開始年齢を65歳から66歳に引き上げたところ、65歳の貧困率が2倍になったそうだ。
こうした状況を防ぐためには年金支給開始年齢まで働ける雇用法制が欠かせない。
その点日本は労働法で企業に65歳までの雇用を義務付けているので、それほど大きな影響はでていない。
62歳から64歳に年金支給開始年齢を引き上げるという政府の方針に大規模なデモが行われたのがフランスだ。
64歳なら問題ないだろうと思うのだが、余暇を大切にする国民性なのか、労働に対する考え方の違い(日本人は働くことは善だと考えるが、フランス人は労働は悪だと考えるそうだ)8割の人が年金改革に反対している。
ブルームバーグの記事では退職年齢に関して、二つの事例を紹介している。ひとつはオーストラリアの先住民族のアボリジニの例だ。彼らの平均寿命は一般のオーストラリア人に比べて男女とも20歳以上短い。だから年金を受給する前に亡くなる人が多いのだそうだ。こうした人にとって年金開始年齢が引き上げられると死ぬまで働かなくてはならないことになる。
もう一つは肉体的にきつい仕事や危険な仕事をしている人の例だ。年を取った身体で肉体的精神的に過酷な仕事をするのは困難だ。
そういえば産業別労働組合の労働委員をしているとき、退職年齢を60歳から65歳にするという方針を盛り込むべきが議論したことがあった。そのとき工場労働などをしている組合員は65歳まで働くのは肉体的に厳しいという意見が出て、結局65歳定年制については方針としないことになった。
平均年齢が延びていけば、退職後の人生も長くなる。
人生100年といわれる時代。だから、多くの人がその人にあった仕事で長く働ける世の中にしていくのが良いと思うのだが……。
私は働けるうちは働くつもりだ。