ビールを売れなくしたのは誰だ!

アサヒビールが神奈川工場(南足柄市)と四国工場(愛媛県西条市)を来年2023年に閉鎖すると2月15日に発表した。
神奈川工場は東京工場(大田区大森)を閉鎖して2002年に稼働を始めた工場で、21年という短命に終わってしまった。
昨年100周年を迎えたアサヒビールの博多工場も2025年末で操業を停止し、新九州工場(場所は未定)に移転するそうだ。

祖父は博多工場で長年働いていて、母も若いころ事務員とした働いていたのでアサヒビールの博多工場は身近な存在だ。
太平洋戦争では博多の街も空襲で焼け野原になったが、博多工場は爆撃されなかった。
本当かどうかわからないが、ビール工場の煙突は特殊な形をしていて上空からもよくわかるらしい。すでに日本の敗戦が近いと考えていたアメリカ軍が、占領後にすぐにビールが飲めるように爆撃しなかったと母から聞いたことがある。

博多工場は新工場として生まれ変わる予定だが、神奈川工場と四国工場は完全閉鎖だ。
閉鎖の背景にはビール消費の減少がある。

2020年の消費量は5年前の2016年に比べて約28%も落ちている。
スピリッツ(ウォッカやジンなど)や果実酒、リキュール(第3のビールを含む)の消費量が増えている中で、ビールと発泡酒、日本酒の消費量は減る一方だ。
日本酒の衰退は今に始まったことではないが、ビールと発泡酒の減少にはいくつか理由があると思う。
一つはコロナ禍で飲食店が休業に追い込まれ、休業解禁後も飲酒が制限されたこと。飲食店での最初の一杯は「とりあえずビール」だったからこの影響は甚大だ。
二つ目は若者のビール離れで、ここ数年飲み会でも若い人はビールや日本酒ではなく、チューハイやサワー系の飲み物を頼む人が多かった。ビールは乾杯の時だけという光景があちこちで見られた。

三つ目は税金だ。1989年に導入された消費税は3%だったが、その後1997年に5%、2014年に8%、そして2019年には10%と増税されてきた。
ビールにかかる酒税は350ミリリットル缶で以前は77円だった。2020年に70円に引き下げられたものの消費税も上がったので実質的には3円程度しか下がっていない。
チューハイやサワー類の酒税はビールより42円安い28円なのでビールは割高だ。
日本人の平均給料が下がっていく中で、いまやビールは気軽に飲めないお酒になってしまっている。なのでタイやフィリピンで現地のビールが日本円で100円未満で買えるのはとても安く感じられてビール好きにはうれしい。

来年2023年に酒税が改正され70円が63.35円に、2026年には54.25円に引き下げられる予定ではある。ただしウクライナ情勢だけでなく原材料も上がりしそうなのでビールの値段は簡単に下がりそうもない。
一方で他の酒税は引き上げられるので、いずれにせよ酒飲みには明るい未来が来そうにはない。
もっともお酒をやめれば済む話ではあるが…




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