不名誉な評価

アメリカ合衆国の国務省が毎年発表している人身売買報告書で、四段階評価でフィリピンは段階1と評価された。一方日本は段階2とフィリピンよりも一段低い評価を受けている。

この報告書では、フィリピンがアメリカ合衆国の人身売買被害防止法が定める最低限の基準を「十分に満たしている」と評価。2021年に人身売買被害者特定のための調査基準(SOPs)を策定し、海外フィリピン就労者の問題を一元的にあ取り扱う移住者労働省(DMW)を設置したことなどが評価されている。

これに対し日本は技能実習制度での問題などが響いて段階2という不名誉な評価となっている。
以前に比べれば技能実習制度は改善されてきているが、いまだに技能実習というのは名ばかりで、日本人が働きたがらない仕事を低賃金でさせているケースも多いようだ。

技能実習は海外進出した日本企業が、現地で働く従業員を日本の本社や工場で現場実習させることで、日本の仕事のやり方や考え方を学んでもらい本国で役立てることを目的としていた。
教育を受け現地に戻った従業員は、日本で学んだ技能を生かすことで活躍できた。だから渡航費や滞在費は会社が負担するのは当然のことだった。

この技能実習を国際貢献のひとつとして制度化したのが技能実習制度だ。
ところが本来の目的にそぐわない事案が多々でてきた。技能を学んでも本国で活かすことができない仕事を安い賃金で働かせるといったことが行われてきた。

技能実習生にも労働基準法が適用されるが、受け入れ事業所の7割以上で違反が見つかるなど問題が多い。
もっと問題なのが、海外から日本に技能実習生を送り出す機関の中に法外な手数料をとっているところがあることだ。実習生は親や親せきから多額の借金を負って技能実習生として日本にやってくる。いわば合法的な出稼ぎ労働者として入国しているのだ。

それでも日本で技能が身につけられれば良いが、実際の仕事は単純作業で本国にもどっても役に立たないというケースが多いと聞く。仕事や人間関係が合わなくても他の事業所に異動することも、仕事を変えることもできない。そうなると技能実習は強制労働になってしまう。

それがいやで失踪する技能実習生の数あとをたたず、その数は毎年数千人にのぼる。
本来なら問題を解決し保護の対象としなければならない存在だが、実際には不法滞在者として警察に逮捕され強制送還となるのが現実だ。日本は外国人にとってけっして温かい国というわけではないのだ。

人身売買という汚名を返上するためにも、実態を伴わない技能実習制度はやめるべきだと思う。

さて、今回の報告の中に気になる箇所がある。それはフィリピンの女性をホステスとしてバーなどで働かせているという箇所だ。いまだにそんな例があるのかと思うが、10人のフィリピン人が被害にあっていると記載されている。

日本中にフィリピンパブができ、どこも繁盛していた時期があった。ダンサーやシンガーとして入国したフィリピーナがホステスとして働いているのを見咎めたのがアメリカ合衆国の人身売買報告書だった。慌てた日本政府がフィリピーナの入国に当たってビザの厳格化をした結果、日本に来て働くことができなくなった。そんなことをふと思い出した。


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