分かれ道。どっちに行くニッポン

昨日の日本経済新聞に「個人マネー、海外株に年8兆円」という記事が載った。

記事によると、国内の投資信託を経由した海外株への投資額は1月から5月に2兆3千億円になったそうだ。同じ時期の国内株の投資額は3500億円でしかないので、その差は約6.6倍になる。

このブログでも警鐘を鳴らしているが、家計の資産が本格的に海外逃避しはじめたということだ。

個人マネーの海外投資が増える背景には、世界の経済は成長しているのに日本だけが成長が止まっていることにある。
個人所得は増えないどころか減っている。社会保険料や消費税は上がる一方だ。
実質賃金は1990年を100とすると2019年には87まで下がっている。
家計の可処分所得はどんどん下がっている。つまり年々日本人は貧乏になっているということだ。

可処分所得が減る中、多くの日本人は将来のため、できるだけお金を節約して貯蓄している。その結果が個人金融資産2000兆円だ。
この金融資産の多くが銀行預金なのだが、預金金利は0.001~0.002%でしかない。100万円預けても10~20円しか金利がつかない。

老後2千万円問題(平均的な年金受給世帯は老後資金として2千万円が必要)報道で、若年層を含めた多くの日本人が老後の経済不安を掻き立てられた。
銀行預金ではお金が増えないことに気づいて、一部の資金が少額投資非課税口座(NISA)へながれ始めている。NISA口座数は昨年末1100万をこえ、総買付額も昨年6月末で17兆円と膨らんでいる。
こうした投資信託の一部が利回りの良い海外株へ流れているのだ。

個人マネーの海外投資はいずれ日本に戻ってくるとはいえ、その間日本国内で稼いだお金が海外に流れ、海外の企業とその国の成長に使われるのだから必ずしも日本経済にとって良いことではない。
しかも円を売って外貨(主にアメリカドル)で株を買うので円安を助長する。円が安くなると海外からの輸入品の値段が高くなって日本国内の物価が上がる。物価が上がると家計が苦しくなって物を買えなくなって消費が減り、企業の売り上げも落ちる。企業が儲からなくなると給料も増えないどころか減っていく。
こうしてさらに日本人は貧しくなるという悪循環に陥るわけだ。

新型コロナ禍の前まで、日本国内の消費が伸びないから海外の観光客を呼び込んで経済を活性化しようとしていたが、このインバウンドによる収入は最も多かった年でも4兆8千億だ。
この1年間に流出した海外投資8兆円の6割でしかない。

日本人がお金をもっていないわけではない。将来に対する不安があるから節約して貯蓄や投資をしているのだ。
誰だって少しでも豊かな生活を望んでいるはずだ。一部でも不安を取り除ければ、貯蓄に回しているお金を今の幸せのために使えるようになる。
インバウンドなんかに頼らずに消費が増えて景気がよくなっていくと思う。

財務省は盛んにプライマリーバランス黒字化と唱えている。夏の参議院選挙で自民党が勝てば消費税増税も視野に入ってくる可能性がある。(まずは暫定的に8%に抑えられた食料品を10%にするなど)
しかし政治にいま必要なのは、国民が将来に対して少しでも明るい気持ちをもてる政策を掲げ実現していくことだ。
国民が豊かになれば、自然にプライマリーバランスも黒字化すると思うのだが。




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