安い日本円

このところ日本円が他国の通貨に比べ独歩安となっている。

10年前は1ドルは77円と高値を付けていたがアベノミクスで一時期1ドル125円という異常な値下がりをへて110円台で落ち着いていた。
ところがここ数日ダラダラと値下がりし113円になってしまった。

為替相場はさまざまな要因によって決まるので適正な為替レートがいくらかという判断は難しい。
それでも現在の円は安すぎると思う。

ビッグマック指数というものがある。これは各国のビッグマックの金額をもとに購買力平価を推測するものだ。
2021年版によるとアメリカ合衆国のビッグマックの値段は5.65ドル。日本は3.55ドル(390円)だ。

この指数から計算すると1ドル69円が適正な為替レートになる。
ちなみにフィリピンのビッグマックの値段は2.82ドル(142ペソ)日本円だと316円になる。

日本国内で生活していると為替レートを意識することはあまりないが、我が家のようにフィリピンの家族に送金していると敏感にならざるをえない。
まして移住後は年金を現地通貨で受け取ることになる。円が下がればその分受取額が減ってしまう。

リスク回避の意味もあって毎月ドルの積立てをしている。
円換算すると資産額は増えているがちっともうれしくない。やはり円は強い方が良い。

海外から日本に来た観光客は、日本はなんでも安くておまけに品質もサービスも良いと評判がいい。
逆に海外旅行をする日本人は旅行先の物価が高いと感じることになる。
たとえば日本から手軽に行けるシンガポールはホテルも食事も高い。ちなみにビッグマックの値段は4.31ドル(474円)。
かつては物価が安いと感じていたタイですらビッグマックの値段は3.9ドル(429円)と日本より高い。

日本が海外輸出で外貨を稼いでいた時代は円が安いと価格競争力が強くなるので有利だといわれていたが、2019年の貿易収支は1兆円の黒字しかない。近年は貿易収支が赤字になることもある。
いっぽう海外投資による配当・利子の収支は21兆円の黒字。つまり今や日本は海外投資からのリターンがとても大きな国になっている。

このリターンの受取を海外通貨から円に換えるなら投資家にとって円安は悪くない。
海外の旅行客が円安を喜ぶのと同じだ。

しかし海外からの輸入品は高くなるので、国民にとって円安は歓迎できない。
農林水産省によると昨年の食料自給率は生産額ベースで67%しかない。つまり33%は海外からの輸入に頼っているので円安になると食料品も値上がりすることになる。
もちろん農産品の場合、産地の生産高によっても左右されるので為替レートだけで金額が決まるわけではないがここ数年食料品がじわじわと上がってきているのは事実だ。

為替レートだけが国の経済力を示すものではないにしても、これ以上の円安が続くことは歓迎できない。

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