敗戦から75年に思う

日本がアメリカを中心とした連合国との戦争に負けてからちょうど75年。

多くの人を苦しめたあの戦争とはいったい何だったのだろう。そんなことを考えながら「日本軍兵士ーアジア・太平洋戦争の現実」を読んだ。

この本によると日中戦争から太平洋戦争が終わるまでに亡くなった人は、日本人の軍人・軍属が約230万人(このうち当時は日本領だった朝鮮と台湾の人5万人)。一般市民が80万人で合計310万人。

対する連合国の戦死者はアメリカ軍約10万人。ソビエト軍約2万3千人。イギリス軍約3万人。オランダ軍約2万7千人(民間人含む)。

そして、日本が戦い、占領した国々で亡くなった人は1900万人にのぼる。

毎年日本では広島・長崎の原爆投下から敗戦記念日(一般には終戦記念日)の時期、テレビでは戦争の記憶を風化させてはならないという報道があるが、そこには日本人のことしか扱われていない。しかしあの戦争で犠牲になった人の多くが、日本が開戦した戦争に巻き込まれたアジアの人たちだったことを忘れてはならない。

私の父の兄は、敗戦の年日本兵としてフィリピンのルソン島で亡くなっている。戦病死だったそうで、おそらく飢餓とマラリアによって命を落としたのではないかと思う。フィリピンで死亡した日本兵33万6千人のうちの一人だ。

一方でフィリピン人の犠牲者は日本兵を大きく上回る111万人と推計されている。

私の妻はセブ島出身のフィリピーナで、戦争のことを話したことはないが、今年亡くなった妻の父は1944年生まれだから直接戦争の経験はなかっただろうが、親戚にはあの戦争の犠牲者もいたと思う。だから娘が日本人と結婚することに、なにかしらの想いがあったのかもしれいない。

私は1956年生まれ(もはや戦後ではないといわれた年)で、戦争については両親から聞かされるくらいで実感はない。父は海軍兵士として鹿児島の志布志湾で訓練を受けていたときに敗戦を迎えたらしい。母からは博多の街が焼け野原になったことや、アメリカ軍の戦闘機の機銃掃射を受けたことを聞いたことがあるので、今の若い人たちからみればまだ戦争を身近に感じられる年代だと思う。

敗戦から75年を迎える今日。マスメディアも多くの戦争について報道すると思う。もちろんあの戦争で犠牲となった人々の慰霊をすることは大切なことだが、同時になぜ日本があの無謀といえる戦いをはじめたのかを真剣に問うことが何よりも大事なことだと考える。

日本はあの戦争を反省していないと東アジアの国からいわれる最大の原因は、日本と日本人が戦争の総括をしていないことだと思う。高校の日本史では明治大正までは習った覚えがあるが、昭和は学期末にかかるためほとんど触れられなかった記憶がある。

よく比較されるドイツはヒトラーとナチス政権に責任の大半があるという形で総括しているようだが、日本はどうだったのだろうか。私たち一人一人が考えるとともに、政府が中心となってコンセンサスを得ながら、あいまいな反省でなく総括していかないといけない。

戦争はいけないのは当然だが、あの戦争をなぜ私たち日本は止めることができなかったのか、肚落ちするまで(納得するまで)突き詰めておかないと、また過ちを犯さないとは限らないのではないだろうか。

おすすめの記事