マルコス大統領から異例の(?)注文

マルコス大統領が掲げるプロジェクトの一つに貧困層の住宅建設プロジェクトがある。
フィリピンの貧富の差は広く知られているが、それを象徴するのがスクワッターと呼ばれるエリアがあることだ。スクワッターというのは自分の土地ではない場所に不法に占拠し住み着いたひとのことで、マニラやセブの都市部に多くみられ、スラム街のようになっているところもある。

一方でお金のあるフィリピン人は塀に囲まれガードマンが常駐するサブディビジョンや高層マンションで暮らしている。

スクワッターの家は多くがバラックで、衛生環境も悪い。そこに住む人々の生活は苦しく、子供たちにまともな教育を受けさせることもままならない。それが貧困の連鎖を生んでいる。

こうした人々に優良な住宅を提供するのがマルコス大統領の住宅建設プロジェクトで、在任期間中にフィリピン全土で600万戸の低所得者向けの住宅を建設することを目指している。

そんな中、2月27日にマルコス大統領臨席のもとセブ市南岸都市開発プロジェクトの起工式が行われた。
今回行われた起工式は、25ヘクタールの土地に20階建ての住宅を10棟がたつプロジェクトの開始を告げるもので、完成すれば8000人が住むコミュニティが出来上がるそうだ。
今回の第一期工事をふくめ、最終的に60ヘクタールに3万戸の住宅が建設される計画だ。

起工式であいさつに立ったマルコス大統領は、単に住宅を建てるだけでなく、新たなコミュニティが育つ「人間居住区」として繁栄することを希望すると述べ、そしてそこに住む人々に次のような注文をつけた。

「住宅の手入れをし、清潔で整然とした状態を保つこと」

せっかくモノや仕組みをつくっても、運用や保守が苦手なフィリピン人には耳の痛い言葉だろう。
もっともセブ市をシンガポールのような街にしたいというラマ市長にとって、マルコス大統領のこの言葉は何よりの激励になったのではないだろうか。

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