来年度から給与支払いにデジタルマネーが認められることになった。
事業主は一定の期日を定め、月一回以上、通貨で、全額を直接労働者に支払うのが大原則だ。
以前は現金支給がメインだったが、1968年12月に起こった3億円事件(東京府中市にあった東芝工場の従業員に支払うボーナスが現金輸送車ごと強奪された事件)以降現金から銀行口座振込みに移行していった。
国家公務員の給与振込が導入されたのは1974年。民間企業もそれに倣ったのではないかと思う。
私が社会人として初めて給与をもらったのは1979年5月だったが、現金でもらった記憶がある。
当時上司だった課長が給料袋が机に立つのを見せて自慢げだったのを思い出す。その課長はとても尊敬できる人だったから、一生懸命働けば、いずれは私の給与袋も立つことを見せたかったのだと思う。そんな時代だった。
それがいつのころから、給与は銀行振込になって明細だけが給与袋に入るようになった。正直味気ないなと思った。同時に家庭における父親の尊厳も失われたのではないだろうか。かつては給料日に現金の入った給与袋を配偶者に手渡すことで、稼いでくる父親に対する感謝の念が生まれていたのだから。
給与の銀行振込は企業側にとって大きなメリットがある。なんといっても現金を銀行で引出し、必要な金種に両替し、それを会社に持ち帰って従業員の給与袋に入れるという作業は手間と時間がかかる。
以前勤めた会社で従業員の給与を現金で配布していたが、相当に気を遣う作業だった。その点銀行振込は伝票だけ、今はキーボード操作だけで済み、しかも盗難の心配もない。
時は変わり、来年春からは銀行振込に加え、デジタルマネーで給与を受取ることができるようになる。
現行の給与振込で何の問題もないのではないかと思うが、例えば外国人労働者の中には銀行口座開設に苦労する人もいるらしい。デジタルマネーなら銀行口座なしでも給与が受取れるので企業側も現金支給しなくてもよいというメリットがあるらしい。
PayPayや楽天Edyなどの会社は大歓迎だと思う。一方銀行が反対しているかと思うとそうでもない。多くの人の銀行口座の平均残高はそれほど多くなく、手間がかかるだけで銀行の収益にとってはマイナスらしい。だから小口の取引をなるべく少なくしたいので、今回の制度導入に反対する理由がない。
私はプリペイド式デジタルマネーはほとんど使わないのでこの制度を利用する予定はないが、デジタルマネーが海外送金に使えるようになると(すでにその動きがある)妻は利用するようになるかもしれない。