そう長くもない人生を有意義に送るには、一瞬一瞬を大切に生きることがなにより必要だといわれている。
いまこの時をしっかり生きると簡単にいうが、実際にはなかなかむつかしい。
ともすると私たちは、起こってもいない将来のことを心配したり憂いたり、過去に起こったことをいまさら悔いたりすることに時間を費やしがちだ。
もちろん将来のために計画を練ったりすることは意味があるし、過去の出来事を想い出して懐かしがったりすることは悪いことではないし、そのことで幸せを感じるのなら心の健康にもプラスだと思う。
ところがえてして人間の意識は楽観的なものより悲観的な方向に向きがちだし、マイナスの感情は雪だるま式にどんどん大きくなることが多い。
そうした感情に支配されないためにも、「いま、ここ」に意識を向けることが大切だ。
これが実は普通の生活をしている凡人には非常にむつかしい。
仏教でヴィッパサナー瞑想がある。これは「今という瞬間に完全に意識を集中する」瞑想で、「いま、ここの自分」に気づくことから「気づきの瞑想」ともいわれている。
自分の感情や動作に「ラベリング」をして客観的に自分を観察することで、雑念が払われ「ありのままの自分」に気づくとともに「いま、ここ」に意識を集中することができる。
手のひらに乗るコンピュータ(スマートフォン)によって、絶えず私たちの意識は「ありのままの自分」や「いま、ここの自分」の外のどうでもいいことに向かうことが常態化している。
スマートフォンは確かに便利ではあるが、大切な時間と「いま、ここ」でしか味わえない人生を奪われていることにも気づく必要があると思う。
自分の意識に碇を下ろして、一瞬一瞬を大切に生きていきたいものだ。